liner notes

君が誰かの彼女になりくさっても

TEXT/真貝 聡

多くの人がそうであるように、僕がSunday(カミデ)さんの存在を知ったのは『君が誰かの彼女になりくさっても』がきっかけだった。 この曲がリリースされたのは2009年。当時はワンダフルボーイズではなく、前身バンド・しゃかりきコロンブス。名義で発表された。MV、ライブ、奇妙(礼太郎)さんがカバーしている動画を何度も観て、引き戻すことのできない過去の恋愛に思いを馳せた。そして21歳だった僕は、横浜から大阪の梅田ムジカジャポニカまでライブを観に行って、帰りの夜行バスの中で金波銀波のネオンを横目に『君が誰かの彼女になりくさっても』を聴きながら、もう一度Sundayさんの声に優しく包まれた。 あれから10年。時間が経っても色褪せることないこの曲は、どれだけの人を感動させて、どれだけの人に歌われてきたのだろう。Sunday(カミデ)さんにどんな思いでこの曲を作ったのか尋ねてみた。

Sunday:こういう失恋のことを歌う時にカッコつけたり、回りくどく言っても仕方ないじゃないですか。とにかく箇条書きで書こうと思ったんです。

レゲエやHIPHOPで多用される1ループのコード進行に、メロディを変えていくシンプルな構成は一聴しただけで耳に残る。そして<ずっとずっと君が好き 誰かの彼女になりくさっても>というフレーズは1番、2番と繰り返すたびに言葉が強さを増して、走馬灯のように“あの子”との思い出がハッキリと脳内で再生されていく。

Sunday:7年前くらいだったかな、奇妙くんがそろそろ東京へ移住するという時に「最近、いろんな弾き語りのライブで『君が誰かの彼女になりくさっても』を歌わないと終われない現象が起きてます」みたいなことを僕に言ったんですよ。思い返せば、奇妙くんが誰よりも一番この曲と数年間を共にしたような気がします。(奇妙くんが)有名になっていくのと同時に、この曲も一緒に連れて行ってもらった感じでしたね。

考えてみれば『君が誰かの彼女になりくさっても』はSundayさんの代表曲であり、奇妙さんの代表曲でもある。そして2013年にSundayさん、奇妙さんはテシマコージさんを迎えて天才バンドを結成。1stアルバム『アインとシュタイン』で再びこの曲を収録することになった。

Sunday:天才バンドを組んだ時、「『君が誰かの彼女になりくさっても』をアルバムに入れましょう」という話になって。奇妙くんは本来のメロディを何箇所か崩してレコーディングしてて「奇妙くん、そこメロディ違いますよ」と伝えたら「2テイク目、頑張ります」と言ってくれるんですけど、とにかくどこかメロディラインが違う。3テイク目で奇妙くんが「Sundayさん、次こそは観ててください!」と言って歌うんですけど、また違うんです。というかどんどん違っていくんです。とはいえ、どれもテイクは素晴らしいのでこの中から選ぼうと思ってOKを出した。それで奇妙くんがブースから出てきた時、僕に小声で「本当のメロディはSundayさんに残しておきました」と言ったんです。

奇妙さん自身、この曲によって名前が広まったのは間違いない。何年も、何べんも大事に歌ってきた奇妙さんだからこそ「最終的にはSundayさんが自分のタイミングでリリースしてくださいよ」と、バトンを渡すような気持ちで発した言葉だったんじゃないかと思う。
そのタイミングこそが、4月10日にリリースされるワンダフルボーイズのメジャーデビューアルバムである。音源を聴くと、メロディや歌い方は10年前と変わっていないが、しゃかりきコロンブス。とも天才バンドとも違う。アレンジによってサウンドの表情が豊かになり、Sundayさんの素朴な歌声と良いギャップを生んでいる。さらにストリングスが加わったことで、より歌が際立って聴こえる。


Sunday:あいみょんのサウンドプロデュースをした時、その辺をかなり意識したんですよね。とにかくボーカルがバッチリ映えるように、演奏やアレンジを素朴にするんじゃなくて、よりアーティキュレーション溢れる感じにしつつ王道なところも目指しました。

ちなみにMVはSundayさんの他、オファーを二つ返事で快諾したという麻美ゆまさん、俳優に挑戦した奇妙さんが出演している。かつて付き合っていたあの人と歩いた道。楽しかった思い出を抱きしめながら独りになった男と女が歩く、そんな映像だった。リスナーはもちろん、いろんな人のドラマに寄り添い続けた名曲。そんな新しく生まれ変わった『君が誰かの彼女になりくさっても』をぜひ聴いてほしい。

——2009年にリリースされた当時、一緒にこの曲を聴いて「……良い曲だね」と切ない表情を浮かべていた彼女は30代になった。今頃は誰かの彼女ではなく、結婚して子供もいるかもしれない。あれから僕は東京に移り住み、もうすぐ6年が経つ。時間の流れとともに、いろんなことが変わった。だけどやっぱり<ずっとずっと君が好き 誰かの彼女になりくさっても>。